システム開発の現場では、言われたことしかしない人あるいはできない人がいます。
前者を動かない人、後者を動けない人と定義します。
それぞれのタイプの人の心理を考えたことがありますか?
なぜ、この人は動かないんだろうか?動けないんだろうか?と。
今回は、一般的には役に立たない人と言われている、これら動かない人と動けない人の考えていることについて考えてみたいと思います。
彼らの心理を理解できれば、次は我が身だということが理解できるでしょう。
動かない人
システム開発は、最初にメンバー全員が揃ってスタートすることはまれです。
例えば、要件定義には、SEだけが選出され、ユーザーとやりとりをしながら、何をシステム化したいのかを詰めていきます。
そして、それが決まったあと、外部設計で増員、内部設計でまた増員、実装でまたまた増員と、だんだんメンバーが増加していくのが一般的です。
これは、予算管理の観点で合理的です。
まだまだ、実装できるレベルにない状態で、プログラマーを大量に抱えれば、遊ばせておくことになりますが、何もしていないくとも、人件費はかかるのです。このような無駄なことは普通はしません。
ですから、時期が来たら、増員するということをするのです。
そして、この増員というのが、システム開発の難しいところでもあります。
システム開発の現場が非常に排他的だからです。
元からいるメンバーが仲良しグループになり、後から入ってくるメンバーを仲間に入れない文化があちらこちらに存在します。
まず、このことをしっかり理解してください。
システム開発の途中から参入した経験のある人なら、その雰囲気というものを感じたことがあるかもしれません。もちろん、全ての現場が排他的というわけではありませんが、排他的な現場が多いように感じます。
フリーのSE・プログラマの人ならば、嫌でも感じていることでしょう。
経験が豊富なベテランSE・プログラマであればあるほど、途中から入った場合、若手のリーダーなどに「おっさん」扱いされ、なぜか、上から目線で見られることもしばしばあります。私も同じように扱われることが多いです。50なのでしょうがないといえばしょうがないですが。
はじめての現場であれば、当然何も分かりません。そこで、色々と話を聞こうとしますが、すごく面倒くさがられることが多いです。
その反面、元からいるメンバーたちとどうでもいい無駄話や下品な笑い方をしながらはしゃぎ、自分たちは楽しんでいる風です。コミュニケーション能力とは何か?高い人と低い人の違いは?でも書きましたが、コミュニケーション能力が低く、まさに騒音を撒き散らしています。こういう状況の中、なんか疎外感を感じてしまう。
だいたい最初の雰囲気とはこのようなものではないでしょうか?
そして、最初の雰囲気の中、だいたいが、次のようなことをお互い考えているはずです。
リーダー:「また、おっさんが来たよ。なんか仕事できなそー。頼むから、ちゃんとやることはやってくれよな。おっさんなんだから。」
新規参入者:「また、低レベルな現場だな。リーダーも相変わらず馬鹿だろう、どうせ。あー、なんでここ来てしまったんだろう。とりあえず、自分のところだけやろう。」
間違っても、お互いをリスペクトするようなことを思ったりはしません。互いを寄せ付けないようなオーラが醸し出されています。
こうなる理由は、単純です。
リーダーは、過去に、新規メンバーがあまりに失敗ばかり起こし、そのしわ寄せでかなりのダメージを負った経験があったのです。
もうあのような地獄はたくさんだから、自分でやったほうがよっぽど楽だよ。頼むから、ちゃんとやってくれという思考になっているからです。新規参入者は、仕事ができないというイメージが定着しているのです。
新規参入者も、過去にあまりにできないリーダーのせいで、毎日終電、土日出勤はあたりまえの状況で疲弊し、いくらヘルプを提案しても受け入れてもらえず、結局は、自分ばかりが追い込まれることになり、自分だけ苦労するのはもうたくさんだという思考になっているからです。リーダーは、無能でメンバーばかりが苦労するというイメージが定着しているのです。
このように、お互いを否定しているわけです。ですから、信用のおけるメンバーだけでやっていこうとします。逆に信用したいとも思っていないのです。
ここが、システム開発の難しい問題でもあるのです。つまり、人間関係の問題です。
ですが、このような状況でも、仕様書や設計書があれば、動かない人は障害(バグ)が出ないようにきちんと仕事をします。自分の行う仕事の範囲を見極め、リーダーが何も言えないようにしているのです。
その仕事ぶりをきちんと評価できるリーダーであれば、人として見込みはありますが、そうではないのなら、考えを改めたほうがよいでしょう。
仕事ができないと思っているのはリーダーだけで、逆に、リーダーが仕事ができないと思われています。
このことに気づくべきです。
動かない人は、優秀な人の場合が多いです。
あえて、必要以上に動きません。言われたこと以上のことをしないのです。そして、リーダーや周りのメンバーのことを観察しています。
特に、リーダーのことをナメテいます。面倒なことに巻き込まれないように、立ち回っているのです。
逆の見方をすると、自分が動かなくてもいいように、動いているということです。
ですが、いざ緊急性を要するような場合は、きちんと対応できる人が多いのです。
このようなタイプのメンバーをチームの一員として敬い、きちんと生かせられるリーダーであるならば、システム開発はうまく回っていくことでしょう。
自分が必要とされ、頼りにされることが何より、その人のモチベーションにつながり、動くようになるのですから。ただ、頼り過ぎは、また同じ状態になり動かなくなることを覚えておくとよいでしょう。
動けない人
動けない人は、先の動かない人と比べると、事情は変わってきます。
動かない人は、あえて動いていないのであり、動こうと思えば動ける人です。
いざという時に頼りになるタイプです。
一方、動けない人は、動きたくても動けない人なのです。
それは、経験が少なく、自信がないということもあるでしょうし、過去に大きな障害(問題)を起こし、チームに多大な迷惑をかけてしまい、また失敗してしまうのではないかといつもおどおどしてしまうということもあるでしょう。
こういうタイプの人に対して、先ほどのリーダーが接すれば、動けない人は、ますます怖気づいてしまいます。
動けない人が新規参入した場合は、「なんだか怖そうなリーダーだな。怒られないようにしないといけないな。でも、大丈夫かな?また、失敗したらどうしよう。」
などと、考えています。
動かない人とだいぶ違うのが分かると思います。
ですが、与えられた仕事をきちんとやろうとする姿勢はあるのです。あくまで、姿勢です。仕事ができるできないではありません。
ですから、動けない人に対しては、動けるような配慮をしていく必要があるのです。
おどおどしている人に、怒鳴ったり、喝を入れたりすれば逆効果だということを理解してください。
リーダーが言い方を少しでもきつくすれば、動けない人は、より萎縮し、失敗をしてしまう可能性が高くなってしまいます。
ですが、動けない人は、ちゃんとやることを理解できれば、丁寧に仕事をこなします。それで十分ではないでしょうか?
言われたことができないのではなくて、リーダーが言っていることを理解できていないのですから。
きちんと、分かるように伝える努力が必要なのです。
いずれにおいても、システム開発でチームを運営していく立場のひとたちは、チームがうまく回らないのはメンバーのスキルが足りないからだという思考を改める必要があります。
誰も、好んで仕事をしないわけではありません。
仕事をしない、できないのには、きちんとした理由があるのです。それを理解できるかどうかです。
ユーザーの要望やシステムのイメージをきちんと分かるように伝える努力をしていますか?伝える努力がなければ、誰もシステムのことが分かりません。ですが、ほとんどの人は、過去の経験をもとになんとかしようとします。
双方のベクトルが同じ向きにならなければ、チームがうまく回るわけがないのです。
カテゴリ:コミュニケーション